AGURI UCHIDA

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研究紀要・制作ノートのための覚書 vol.3

2018年10月14日撮影。

ここまで来るのに下塗り、地塗りをした画面に直接木炭でデッサン。

河のフォルムを試行錯誤しながら、全体の骨格としてのデッサンを取る、このあたりから横画面から縦画面の絵に変更したため、エスキースで構図を考え直し大きく変更。

横画面から縦画面へ変更をした理由には幾つかの偶然の出会いと示唆がある。

2012年に開催された神奈川県立近代美術館葉山の展覧会、国立民族学博物館コレクション「ビーズ イン アフリカ」、美術館メイン会場の中央を斜めに大きく仕切る台座の上で、頭部の作品が一点のみ展示されていたことにとても衝撃を受けました。周囲の壁には何も飾られておらず、ビーズで覆われた顔と頭部の造形がストイックに異彩を放ち存在していた。このころから作品一点でいつか展覧会をしたいと、漠然と考えていたようである。その後、2015年秋に武蔵美美術館で開催された、「マリク書店の光芒」と「池田良二展」の展覧会を葉山の美術館館長でいらっしゃる水沢勉さんと一緒に見た際に、退任展をこの空間ですることになると話をしながら、ここは新作一点で展示、時系列的な展示にしない方が良いねと、水沢さんからアドバイスを受けたことがずっと心に引っかかっていた。

退任展は通常は武蔵美美術館の一番大きなスペースである展示室3のみの展示となり、当初は一部屋だけで考えていたのに、その後に展示室4、アトリウム、と計3つのスペースを使用できることになり、そうなると当然展覧会がスケールアップしてこれまでの一部屋で1点の構成を考え直さなければならなくなってしまった。

水沢さんに今回の展覧会の大きなディレクションを思い切ってお願いをして、そうした中でアドバイスを受けたのがアトリウムへの縦画面の新作によるインスタレーションだった。たしか10月の葉山での水沢さん、美術館担当者との第一回打ち合わせの時だったかしら、この時はすでに横画面の構成で描き始めていたにもかかわらず、その作品の縦長をイメージした瞬間にこの方が今の絵としては面白くなること、できると、とっさに「縦にします」と答えたことを思い出す。

8メートル近い縦長の画面は、私にとって初めての試みでもあり、アトリウムの空間性を思うと、想像をはるかに超える絵でもあり、描いてみたかったということもあるのです。

  11月にはアトリウムの8メートルの壁への展示を想定して、美術館担当者が模型とイメージを作ってくれて、少しづつアトリウムの空間性と作品をイメージしながら描き始めた。

縦画面に変更したせいで、ここまでに時間をだいぶ費やしてしまったこと。また、大学の授業や幾つかの他の展覧会のための準備や設営、制作(横浜高島屋、太田市美術館・図書館、BankArt、鳥取県立博物館、武蔵美美術館でのリトグラフの公開制作など)で途中の制作が遅々として進まないうちに10月になる、という時期だったように思う。

木炭デッサンの上に墨で骨描き(線描)、墨での骨描きは将来的に作品の絵の具が剥落しても墨の線描はしっかりと残る、墨は画面に喰いつく、という日本画の古典的技法を用いている。

線のフォルムにも抑揚をつけて、均一の線にならないように筆も何種類かの筆を用いて、骨描きの上からはさらに絵具で大きなマッスを意識しながら描いている。




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