チアパス州はメキシコで最も貧しいと言われる地域で、いまでもマヤ民族の末裔が暮らしている場所です。チアパスの中心地、サンクリストバル・デ・ラス・カサスはヨーロッパの観光客で賑わう街ですが、その周辺にはマヤの伝統文化や風習を継承する村々が点在し、サンファン・チャムラ村もそのひとつで、昔と同じ民族衣装と昔からなにも変わらない生活をしています。
チャムラの女性たちは鴉の濡れ羽色のような黒髪を持ち、小柄で顔つきも日本人に良く似ています。彼女たちが針と糸でちくちく刺繍や縫い物をして働いてる姿を見ると、かつての日本の母親もこうだったなと、手先の器用さも一緒なんだと思い出します。
日本もアジアもチアパスも兎に角一緒につながっているのです。
チャムラ村の教会はかつてスペイン人が建てたキリスト教の教会ですが、土着の宗教と渾然一体となり先住民たちはキリスト教と共存しながら祈りを捧げる姿があります。教会の床には松の葉が敷き詰められ、その上で生きた鶏を体になすり付けて病気を治癒するなど、今でも不思議な儀式が執り行われたりしています。先住民にとって、コーラは貴重な飲み物らしく、儀式でも聖水のように使われていました。
チャムラ村で忘れてはならないもの、それは「サバティスタ民族解放軍」という先住民を擁護する集団の存在です。リーダーはマルコス副司令官、彼の唱える「人民が命じ、政府が従う」という理念により国際的な平和的ゲリラ活動として国内外からも支持を得て、先住民たちのカリスマ的ヒーローになってます。格差社会の超激しいメキシコでは、政府によるインディオの一掃がときおり行われるようで、サバティスタは政府とインディオの問題を対話などを通して、民主的に解決するための活動を行っていると聞きます。
サバティスタはTシャツやアニマリートという先住民の作る人形にもなってメルカドで売られていて、愛嬌があってセンスがよいグッズなのでわたしも買って愛用しているのです。
サンクリストバル・デ・ラス・カサス(通称サンクリと呼んでる)にあるレニャテーロス工房は、40年以上も続くマヤ人アーティストたちが運営する工房です。チアパスに自生する野草を染料とした紙漉きや、その紙を使った素朴な木版画、紙版画なども作られ、先住民の言語による文学や美術のうつくしい手作りの本も作られています。レニャテーロスは1975年に詩人のアンバル・パスト氏によって開設され、彼女自身もまたアーティスとして本をつくっています。ここの工房についての本や紙などは、また後日にでも。