AGURI UCHIDA

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GWに反省

 

 

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そもそも街角からという冊子は、美術愛好家でありコレクターでもあった岩崎茂雄さんが出版したものでした。岩崎さんは立川北口駅前にかつてあった立川ビルやクリムトというカフェのオーナーで、その辺りでは有名なコレクターだったのです。今では立川はモノレールができて、近未来都市のようになってしまいましたが、クリムトのある頃の立川は、なかなか風情があって、エミリーフローゲという岩崎さんが経営していたギャラリーもあったのです。岩崎さんはロンドンをこよなく愛し、アパートまで持ってしまい、晩年は立川とロンドンでの生活を楽しんでいらっしゃいました。

 ハンサムで、紳士で、数人の画家を応援しながらも表には出てこずに、絵を描くことを、絵のモデルを愛し、とにかく素敵な方でした。

 

 1982年に出版された「街角から」、私33歳で娘は5歳、あーー、なんという母親だったのだろうか、娘を置いてゴールデン街へ飲みに行くとは。若き日の反省と備忘のためにここに載せておきます。

 

 夜の街     文:内田あぐり

 

  絵を描くことに疲れるとよく私は夜の街へ出かけていきます。5歳になる娘を親の家で寝かしつけ、しのび足で出口に向かうその時から私の心は夜の街へと助走をし始めているのです。横丁から横丁へと、小さな酒場がひしめき合う場末の街は、戦後間もない頃の風情を蓄え、すべての日常性を否定させてくれる魔力を備えているのです。

灯りを暗く灯した店の前に立つ女たちや酔客を少しひやかしながら、私の体は生々しい原色をした街を旅している錯覚に陥るのです。墨色をした闇は都会の虚飾をすべて覆い隠し、それゆえに人々の生々しい色や形がレリーフ状となって鮮明に描き出されるのです。

 そんな中で一人の少年との出会いがあります。歳の頃は17,8歳か、かもしかの様に細くしなやかに伸びた手足とインテリジェンスを秘めた美しい横顔を持つ少年は「男」に対する私の従来の認識を決定的に覆すものでした。視覚的に惚れたと言っても良いのかもしれません。その美しい容姿から、女でも男でもない中性的なエロティシズムを感じたのです。私たち女性が、すらりとしたしなやかな容姿に、憧れを抱くのは「少年愛」を本能的に自覚しているからではないでしょうか。ともかく今まで、「女」しか描いてこなかった私が、街中でもやはり「女」にしか目を向けてこなかったのですが、少年たちとすれ違う度に、その匂いをクンクン嗅ぎながら横目で盗み見るようになってしまいました。

 不協和音を奏でる少年たちの如く、夜の街は途方もない現実を私に展開させてくれるのです。

 

                        (街角から No.3 1982年発行)

 

 

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