AGURI UCHIDA

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今日臨終

 少年の日、“今日臨終”という言葉を知りました。座右名というほどの大袈裟なものではありませんが私の好きな言葉となりました。画家はいつもただいま描いている絵が絶筆となることを覚悟していなければなりません。

                                麻田鷹司


学生の頃に麻田鷹司先生から時折聞いていた言葉「今日臨終」。この時代の麻田先生に学んだ学生たちはみなこう言われて育ったのです。

「あぐりさんは命がけで絵を描いているよね、あ、少し違った、死ぬ気で描いてるよね」と、麻田先生が飲みながら言われた言葉を思い出す2020年の年の瀬。



麻田先生が好きだったタバコ、ゴロワーズ。入院先のベッドの上で「ゴロワーズを吸いたいな、持ってないか」と聞かれて、バッグから恐るおそる差し出した私。病院のベッドの上で美味しそうに吸ってらした。この時麻田先生は57才、翌年に逝ってしまわれて、あまりにも早すぎる死。

ゴロワーズのすえた水色は日本画の顔料で銀灰末という絵具、麻田先生がとても好きだった絵具、先生の風景を描いた空間はこの銀灰末だった。私も真似をして、20代で描いた人間像のほとんどの背景は銀灰末の絵具。 


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