画家・内田あぐり AGURI UCHIDA

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内田あぐり展・ひたむきな「身体」研究 (2008)

text : 田中三蔵(朝日新聞 編集委員)

 変容を続ける現在の日本画。「内田あぐり展」は、その一線の表現の一つが、どんなものかが探れる個展だ。
 内田は1949年生まれ。93年に「第12回山種美術館賞大賞」を受けるなど、日本画界を先導してきた女性の一人だ。初めての回顧展は、いわゆる「本画」13点に、鉛筆やコンテなどで描いたドローイング30余点も加えて構成。大規模ではないが、大まかな軌跡は追える。
 表現のかたちは大きく変わるけれど、一貫して「身体」を追求してきたとわかる。例えば、最も初期の「女人群図−I」(75年)=写真上。どこか「薄幸」を連想させる和服の女性たちの寂しさがにじむ。けれども画家は情緒性におぼれず、まなざしは身体そのものへと向かう。
 さらに、東西の古典を学習し、装飾性も加味しながら、あえて濁った色彩で抑制。やがて「吊された男」の連作など男性の身体も描き出す。解体された身体は、人間存在の孤独そのものを描いてもいるようだ。
 にかわと水という「日本画」の画材が体質に合うと自ら認めている。だが、スクラッチング(削り取り)やコラージュ(張り付け)などの現代絵画の技法を取り入れて抽象化も進め、日本画界刷新の役目も担った。
 近年は長さ10,8メートルにも及ぶ大作にたどり着き、最近作「この世でいちばん美しい場所、#06M」(06年)=同下=も生んだ。幅3,6 メートルの二つの大画面を、少しずらしながら上下に展示。下の画面は、紫と黒が主調色。古画に登場する牛車らしき形と草花の紋、やはり人体の一部らしき描写が混じる。上は赤が効果的で明るくカラフルだ。やはり花模様があり、女性の身体も描かれ、布きれのコラージュもある。全体で「女性性/男性性」という対比を連想したが、読み解きの楽しみはそれぞれに与えられているだろう。
 ねばり強い追求は一つの結実を迎えたようだ。が、今後の転進・深化もまた予感させる、ドラマを内包する会場となっている。

(たなかさんぞう 朝日新聞 編集委員)
初出:朝日新聞夕刊・2006年11月16日[文化/美術])
「内田あぐり個展」この世でいちばん美しい場所、あるいは−
平塚市美術館・2006年10月14日〜12月3日

女人群図−I

内田あぐり
女人群図−I 1976 207,0×289,0cm
雲肌麻紙、岩絵具、墨、膠

この世でいちばん美しい場所 #06M

内田あぐり
この世でいちばん美しい場所 #06M
2006 360,0×360,0cm
岩絵具、墨、布、糸、膠、雲肌麻紙
Photo; Masaru Yanagiba

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